チャイコフスキー
最終更新日 2006/05/28
(目次) 作品番号順
交響曲第1番 ト短調 作品13 「冬の日の幻想」 (2004/06/24一部修正)
交響曲第5番 ホ短調 作品64 (2004/06/24一部修正)
交響曲第6番 ロ短調 作品74 「悲愴」 (2005/05/01一部修正)
作曲年 1866 演奏時間 40分 編成 Fl2、Picc1、Ob2、Cl2、Fg2、Hr4、Tp2、Tb3、Tuba1、
Tim1、Perc2(バスD、Cym)、弦5部演奏経験 1回 (2nd:1回) 所有CD ロシア国立交響楽団 (指揮者:エフゲニ・スヴェトラーノフ) 音域 1st(D−A1)、2nd(Cis−G1)、3rd(E-1−E1)、Tuba(As-2−G) (2004/06/24一部修正)
この曲は、チャイコフスキーにとって、初めての交響曲であり、大作である。この頃のチャイコフスキーは、交響曲とオペラこそが彼が作曲家としてもっとも大切な表現の場、かけがえのないジャンルであることを確信していた。そんな1866年、チャイコフスキーが26歳の時に、この曲は書かれた。
しかし、この曲が完成するまでの道のりは、決して楽なものではなかった。1人前のプロの作曲家としての異様な気負いのために、日夜をわかたず政策に打ち込んでいた。そのあげく、幻覚を伴った発作にも見舞われるようなこともあった。
そのような苦労の中、ようやく生み出されたこの曲は、ロシアの民謡をとりいれ、「冬の日の幻想」という標題を持つ交響曲第1番となった。なお、この曲は、1874年に改訂の筆を加えており、現在では、第3稿が知られている。この曲はチャイコフスキーでは珍しく第4楽章でようやくトロンボーンが登場する。これといった見せ場は、中間部にこの時代のトロンボーンとしては、珍しく3rd→1st→2ndの順番にソロがある。ただし、2nd分のソロは短い。また、最後の5分くらいがずっと吹き詰めになるところの金管全体のコラールがなかなか吹き応えがある。(2ndを吹いていてさえも良い)
この曲の場合は4楽章まで待って、4楽章だけを思いっきり吹けるといった感じの曲であるが、飛ばしすぎると最後のコラールの途中で吹けなくなってしまうので、注意したい。最後に、所有CDであるが、特にここがすごいとか、ここが変わっているといったようなところは感じられなかった。つまり、比較的普通な演奏だと思われます。特に、突出したパートはないので、演奏をする上での参考にするには最適かも知れません。
作曲年 1869 演奏時間 20分 編成 Fl2、Picc1、Ob2、E.Hr1、Cl2、Fg2、Hr4、Tp2、Tb3、Tuba1、
Tim1、Perc2(バスD、Cym)、Hp1、弦5部演奏経験 3回 (1st:2回、2nd:1回) 所有CD シカゴ交響楽団 (指揮者:サー・ゲルオグ・ショルティ) 音域 1st(H-1−As1)、2nd(H-1−E1)、3rd(G-1−D1)、Tuba(A-2−Es)
作曲年 1876 演奏時間 25分 編成 Fl2、Picc1、Ob2、Cl2、Fg2、Hr4、Tp2、Cor2、Tb3、Tuba1、
Tim1、Perc4(バスD、Tri、Cym、スネアD、タムタム)、Hp1、弦5部演奏経験 1回 (2nd:1回) 所有CD ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (指揮者:ヘルベルト・フォン・カラヤン) 音域 1st(Es−Gis1)、2nd(D−Fis1)、3rd(Es-1−H)、Tuba(A-2−Fis)
作曲年 1875 演奏時間 33分 編成 Fl2、Ob2、Cl2、Fg2、Hr4、Tp2、Tb3、Tim1、弦5部、SoloPf 演奏経験 1回 (1st assi.:1回) 所有CD なし 音域 1st(Ges−Ges1)、2nd(H-1−Es1)、3rd(Es-1−B)
作曲年 1878 演奏時間 40分 編成 Fl2、Picc1、Ob2、Cl2、Fg2、Hr4、Tp2、Tb3、Tuba1、
Tim1、Perc3(バスD、Cym、Tri)、弦5部演奏経験 3回 (1st:2回、1st assi.:1回) 所有CD レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団 (指揮者:エフゲニー・ムラヴィンスキー) 音域 1st(A-1−As1)、2nd(E-1−As1)、3rd(E-1−Es1)、Tuba(As-2−A)
作曲年 1880 演奏時間 15分 編成 Fl3(Picc1)、Ob2、E.Hr1、Cl2、Fg2、Hr4、Tp2、Cor2、Tb3、Tuba1、
Tim1、Perc4(バスD、Cym、Tri、タンバリン、グロッケン)、Hp1、弦5部演奏経験 3回 (1st:2回、2nd:1回) 所有CD なし 音域 1st(F−E1)、2nd(A-1−Es1)、3rd(F-1−D1)、Tuba(A-2−A)
作曲年 1888 演奏時間 45分 編成 Fl3(Picc1)、Ob2、Cl2、Fg2、Hr4、Tp2、Tb3、Tuba1、Tim1、弦5部 演奏経験 2回 (1st:1回、2nd:1回) 所有CD ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 (指揮者:小澤征爾) 音域 1st(H-1−A1)、2nd(A-1−Gis1)、3rd(E-1−D1)、Tuba(Gis-2−G) (2004/06/24一部修正)
この曲は、チャイコフスキーの後期の交響曲の代表作とも言える第4交響曲を書いてから約10年後の1888年に完成している。なお、交響曲としては、この間に番号外の1曲「マンフレッド交響曲」が作曲されている。
1888年の5月頃、弟のモデストに対し、「新作の交響曲を書くためのネタを集めているんだけどさ…」という内容の手紙を送っている。おそらく、このあたりから、書きはじめられたと思われる。その後、健康状態もあまりすぐれなかったようだが、自分の体調を気にかけながらも、その年の8月終わりにはこの曲を完成させた。そして、同年11月にペテルブルグにて彼自身による指揮で初演が行われた。演奏会は好評であったようである。
この交響曲の特徴としては、第1楽章の序章にあらわれる動機(これを通常「運命の動機」と呼んでいる)が、全楽章のいたるところでさまさまな形であらわれ、全体を有機的に統一していく。また、第3楽章に、「ワルツ」が採用されているのも、特徴的であると言える。先例がないわけではないが、一般的には「スケルツォ」や「メヌエット」などが置かれているところを、「ワルツ」にしてしまうところが、「ワルツ」を得意としていたチャイコフスキーらしいところであると言える。
トロンボーン奏者としては、非常に活躍の場の多い曲であると言えます。出番のない第3楽章以外のすべての楽章に聴かせどころがあります。ここでは、紹介しきれません。また、この曲を吹くときにはアシ(アシストのこと)を付けるかどうか迷うところです。周りのパート(特に、金管)の状況を見ながら考えてみるといいでしょう。
最後に、所有CDについてですが、録音の都合上(かどうか分かりませんが)ホルンがとりわけ大きく聴こえて、トロンボーンが非常に貧弱に聴こえてしまっています。トロンボーン吹きが持つCDとしてはちょっとお薦めできません。
作曲年 1889 演奏時間 25分 編成 Fl2、Picc1、Ob2、E.Hr1、Cl2、Fg2、Hr4、Tp2、Cor2、Tb3、Tuba1、
Tim1、Perc4(バスD、Tri、Cym、スネアD、タムタム)、Hp1、弦5部演奏経験 4回 (1st:1回、2nd:2回、1st assi.:1回) 所有CD ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (指揮者:ヘルベルト・フォン・カラヤン) 音域 1st(D−G1)、2nd(B-1−Es1)、3rd(Es-1−A)、Tuba(G-2−Es)
作曲年 1888 演奏時間 20分 編成 Fl3(Picc1)、Ob2、E.Hr1、Cl2、Fg2、Hr4、Tp2、Cor2、Tb3、Tuba1、
Tim1、Perc3(バスD、Cym、スネアD、タムタム)、弦5部演奏経験 1回 (1st:1回) 所有CD なし 音域 1st(B-1−A1)、2nd(B-1−G1)、3rd(E-1−Des1)、Tuba(G-2−C1)
作曲年 1892 演奏時間 25分 編成 Fl3(Picc1)、Ob2、E.Hr1、Cl2、B.Cl1、Fg2、Hr4、Tp2、Tb3、Tuba1、
Tim1、Perc1(Tri、Cym、タンバリン、グロッケン)、Hp1、Cel1、弦5部演奏経験 2回 (1st:1回、2nd:1回) 所有CD シカゴ交響楽団 (指揮者:サー・ゲルオグ・ショルティ)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (指揮者:ヘルベルト・フォン・カラヤン)音域 1st(Fis−G1)、2nd(H-1−E1)、3rd(Fis-1−A)、Tuba(A-2−E)
作曲年 1893 演奏時間 45分 編成 Fl3(Picc1)、Ob2、Cl2、Fg2、Hr4、Tp2、Tb3、Tuba1、
Tim1、Perc2(バスD、Cym、タムタム)、弦5部演奏経験 3回 (1st:1回、2nd:2回) 所有CD ジャパン・ヴィルトゥオーゾ・シンフォニー・オーケストラ (指揮者:大友直人) 音域 1st(A-1−A1)、2nd(E-1−A1)、3rd(D-1−D1)、Tuba(G-2−D1) (2005/05/01一部修正)
チャイコフスキーが最後に書いた交響曲であり、非常に有名な曲である。しかし、この「悲愴」という標題は、もともとチャイコフスキーの意思で付けられた標題ではなかったらしい。この曲の初演が終わった後、弟に薦められて、1度は「悲愴」と付けたが、楽譜が出版される時には、何か不満を感じたのかその文字を消してしまっていた。よって、初版の楽譜には「悲愴」の文字はなく、彼の死後の第2版から「悲愴」という標題がついたと言われているらしい。
さて、トロンボーン奏者にとってもなかなか吹き甲斐のある曲である。よって、見せ場となるところも何箇所もある。が、ここでは、絶対にここは決めておきたいと個人的に思っているところを自分の経験とあわせて2ヶ所紹介する事にします。
まずは、やはり第1楽章の285小節目からを挙げる。全体の構造としては、そこに至るまで(練習記号Qから)に不気味で不安定な雰囲気の中、次第に大音響になる。そして285小節目から低音の持続音F#上の問(高音の木管と弦楽器)と答(トロンボーン)という形で現れ、同一の主要楽句を反復させて下降していく。
(譜例 285小節目より。上から問、答、その他、低音。演奏例<MIDI>はこちら)
ここでまわりに消されてしまって全然聴こえなかったら、トロンボーン吹きとして失格である。つまり、存在価値なしです。そんなことが誰の頭にもあるために、ここを吹くときは、多分、必要以上に力が入って、近くでは鳴っていても、全く客席まで聴こえてこなかったり、音の芯の部分がない、非常に汚い音だけが聴こえてしまう、なんてことがよくあります。こうなっても不合格だと思います。やはり、どんな曲も同じですが、このようなff(フォルティッシモ)のところは、いかにして楽に吹くかということが肝心だと思います。ただし、楽をするのではありません。で、まず、表情から。いかに涼しい顔をして、全く苦しいという表情を出さないように吹くのがポイントです。それから、このフレーズの最後の方にかけて、1stから徐々に休みになります。指揮者によっては、最後まで全員で吹くように言う人もいますが、とりあえず楽譜どおり吹いたとします。1人ずつ抜けていくと、どうしても最後の方が貧弱になってしまう場合がたまにあります。バス・トロンボーンとチューバの人が最後まで吹いてくれるのが1番いいのですが、それができない場合は、1stと2ndの人が抜ける直前のところを3割くらいの力で吹くとちょうどいい感じになります。でも、本当はこうはしたくないですね。 さて、1楽章のほかの場所では、あとは最後のコラール(Tpと一緒のところとラストの部分)さえ決まれば、後の部分はなんとかなります。
そして、もう1箇所は、第4楽章のラスト、pで鳴るTamTamの響きの中から現れるトロンボーンのコラールがこの曲の最後の見せ場であろう。
極端な話をすれば、音程を気をつけるだけだが、スタートの音量を小さくしすぎると、dim.が効かなくなり、音がなくなってしまう危険性があるので注意したい。
最後に、所有CDについてだが、ライブ版の録音のくせに、明らかに1楽章の練習記号M付近で4小説ほど抜けている。そんな演奏は聴いたことないし、そんな解釈があるかどうかも分からない。多分、CDにする時に編集、マスタリング中に抜けてしまったのではないでしょうか。ある意味、変なCDである。